構造物のプレキャスト化による現場の変化
今回は構造物のプレキャスト化による現場の変化についてレポートします。
現場管理に長年携わり、特に構造物の施工に豊富な知識と経験を持つ、
日高主任が多面的な観点で検討されたのでご覧ください。
従来工法と比較するプレキャスト構造物は、東九州道路の益安地区に設置されるボックスカルバートで、高速道路と交差する市道を通すために埋設するコンクリート構造物です。
≪構造物のプレキャスト化による現場の変化について≫
構造物の現場打ち施工から工場製作によるプレキャストコンクリート製品に移行する考え方は、国土交通省が推奨する建設現場での生産性向上を目指す取り組みとして、i-Constructionの目的の一つとして進められているものです。
■工程管理について
A.現場打ちボックスカルバート工(規模の似通ったものです)
[鉄筋組立→型枠組立解体→コンクリート打設-養生]×[底版・壁・頂版]
に加えて
[足場組立解体] +[型枠支保工組立解体]
を完全週休二日施工した場合2.5ケ月かかります。
さらに、
[1スパン10.0m(2.5か月)]×2スパン
=5.0ヶ月となります。
B.プレキャストボックスカルバート工
[壁部・頂版] 20.0m / 20セットを
[製品搬入・据付] 20セット]/4(セット/日)=5日
[セメントミルク注入]=2日
プレキャスト部が 計7日
と、
隅角部と底版が現場打ちなので
[底版]を[鉄筋組立・型枠組立・コンクリート打設]×2スパン=6日
[隅角部]を[鉄筋組立・型枠組立・コンクリート打設]×2スパン=6日
現場打ち部 計12日
実働日数 19日+養生
を完全週休二日で施工した場合1.5か月かかります。
以上により、プレキャストより現場打ちのほうが3倍以上日数を要する事となり工事期間が長期になると、資材・機械・作業員等の現場調整、さらに天候にも左右されるため、つねに工程管理が必要となります。
■施工管理について
(品質管理)
A.現場打ちボックスカルバート工
全体がマスコンクリート(温度上昇でひび割れやすい)であるため、主に生コンクリートの品質管理が重要となってくる。
(品質管理に伴う作業内容)
①工程表を作成し、生コンクリートの打設時期(夏季・冬季)により打設・養生方法をその都度考慮しなくてはならない。
②品質向上対策として、第三者コンサル会社等により温度ひび割れ照査を実施し、ひび割れ防止等の品質向上対策を行わなければならない。
③照査内容によって長期の養生、分割施工等が発生(工程・費用が増大)
B.プレキャストボックスカルバート工
①壁部・頂版部については、工場で製造管理されているため、品質にバラつきが少なく高強度コンクリート及び混和剤を使用しているため、現場打ちよりも耐久性にすぐれている。(ひび割れが発生しにくい)
②現場打ち②の照査をしなくてよい。
③壁部・頂版部においては、プレキャスト製品なのでひび割れの心配はない。
以上のように、
プレキャスト製品のほうが現場における管理が軽減できます。
■安全管理について
どちらの工法もクレーン作業・高所作業等での事故のリスクは変わりません。
しかし、一般的に工事期間が長期化する(危険の頻度が増)と事故の発生率が高くなります。
従って、プレキャスト製品化により施工期間を短縮し、壁部・頂版部における鉄筋組立、型枠組立、コンクリート打設といった作業を無くす事により省人化され事故の発生が抑制されます。
従来工法(右)では常に多くの材料で雑然となりがちに・・・
■生産性向上(働き方改革・4週8休を含む)について
国土交通省ではi-Constructionの目的の一つとしてコンクリート工の生産性向上を位置づけており、現場での省人化により安全性の向上及び工期が短縮される事による4週8休制度を導入しやすくなりました
■まとめ
以上の比較結果から、プレキャスト製品は現場打ちに比べてはるかに良いものだと考えられますが、材料費・運搬費等のコストが割高であることからか、あまり導入されてきませんでした。
しかしながら、今後の現場作業における技術者不足などの懸念により、生産性の向上や担い手確保の観点から作業現場での安全性向上などの環境改善が今後必要となっていくと思われます。
今後は国土交通省だけでなく、公共工事全体がi-Constructionの取り組みを進めて行くことにより、コンクリート構造物の大小問わずプレキャスト化が設計段階で標準化して建設業界全体の生産性が向上するよう期待します。